チャペルのケルト十字架

チャペルの豆知識

2018/07/24

キリスト教とチャペル

OVERVIEW

チャペルにまつわる豆知識をご紹介します。

十字架はキリスト教のシンボルの一つである。もとはローマ帝国の死刑の道具であったが、イエス・キリストが十字架刑という苦しみを通して人類の罪を贖われたということで苦しみと犠牲の象徴として使われ、また復活なされたことで死への勝利と救いのイメージとしても使われている。
十字架の横棒をパティブルム(patibulum)と言い、縦の長い木をスティペス(Stipes)と言う。映画や絵では、イエスが十字架の形をそのまま背に負って死刑場に向かったかのように描かれているが、もとは死刑囚がパティブルムだけを背負って刑場へ向かい、刑場に立たせ固定されていたスティペスに組み合わせてはじめて十字架が完成される形であった。
ヨーロッパにおいて十字架は礼拝堂と地域を象徴する尊いものであって様々な形がある。よく見る十字架は、縦が横より長くて横の木を基準にして上より下が長いのを「ラテン十字架」(図①参照)、横と縦の長さが同じなのを「ギリシア十字架」(図②)と言う。イエスが実際に処された十字架はラテン式ではなく、アルファベットの大文字Tの形をしているタウ式(図③)だったという主張もある。このタウ十字は一番古い十字として知られていて、聖フランシスコ修道会のシンボルでもある。そして聖ペトロが殉教される時、イエスと同じ形なのはふさわしくないと言って頭を下にして処刑されたことから由来して、上と下を逆にしたのは「聖ペトロ十字架」(図④)と呼ばれ、似たような理由でX字形の十字架は「聖アンデレ十字架」(図⑤)と呼ばれる。日本にB.S.A.を伝えたポール・ラッシュ(Paul Rasch, 1897-1979)によって建てられた清里の清泉寮の入り口の上に設置されている聖アンデレ十字架をご覧になったことがあるだろう。
立教大学チャペルの入り口の上にはまた違う独特な形の十字架が立てられている。それは十字架の横と縦が交差する部分を円環で繋いだ形を基本とする「ケルト十字架」である。
イギリスの教会は、キリスト教の信仰がローマ教会によって伝えられ支配されていたヨーロッパの他の国とは、違う歴史を持っている。2世紀、ローマ教会が入る前から、既にイギリスには教会が存在していて、特に北の方のアイルランドとスコットランドを中心とするケルト地域で使われていたのが、まさにケルト十字架なのだ。伝説によると、パトリック聖人(St. Patrick)が太陽神を崇拝していた原住民たちを改宗させる際に、キリスト教のシンボルである十字架と太陽のシンボルである円環を組み合わせたとされる。
ネックレスなどにも広く使われるのでご覧になったことがあるはずだが、もとは十字架の中に幾何学的でらせん形の模様が刻まれている。でも、立教チャペルの十字架は、そのような模様を入れずシンプルに作られている。

立教大学チャプレン 金 大原

〔『チャペルニュース』第597号2017年11・12月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕

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