出会った人とのつながりを大切に いまを全力で過ごす

東北楽天ゴールデンイーグルス 田中和基さん

2019/02/04

立教卒業生のWork & Life

OVERVIEW

2019年1月、東北楽天ゴールデンイーグルスの田中和基選手(2017年法学部政治学科卒業)が、新座キャンパスの野球部グラウンドで自主トレーニングを行いました。
プロ野球2年目の2018年に、パシフィック・リーグ最優秀新人賞(新人王)を獲得したことや、立教時代についてお話を伺いました。

2018年度シーズンを振り返っていかがでしたか。

新座キャンパス野球部グラウンドにて、取材にこたえる田中選手

新座キャンパス野球部グラウンドにて、取材にこたえる田中選手

シーズンが始まってすぐの4月初旬に二軍に落ちて、全く打てなかった時には自分の実力ではプロ野球の世界でやっていけないのかも……。今年でなくても、あと2年くらいすればクビ(戦力外通告)かもしれないという気持ちになりました。そんな時に、元福岡ソフトバンクホークスの川崎宗則さんが1年目に成績が伸びず、どうせクビなら悔いがないように思い切りやったと聞いて、僕も先のことなど考えずに、いま全力を尽くそうと意識を切り替えました。
5月下旬に一軍に上がってからは、常に全身全力でプレーすることを心掛けました。結果が出なくても頑張っている姿を見せることが大事だと考えて、監督に明日も使ってみようと思われる何かを残すんだという強い気持を持って、1試合1試合プレーしました。その結果、ある程度成績を残すことができ、新人王にも選んでいただいたことで、105試合に出場した中で出した成績(打率.265、安打112、本塁打18、打点45、盗塁21)は今後の自分の基準になると思っています。

シーズンを通して印象に残った場面はありますか。

純粋に一番嬉しかったのは、1試合左右両打席でのホームラン(2018年8月1日対オリックス)です。

新人王は「獲れると思っていなかった」とコメントされていました。

そうですね。ライバルが多かったので、票が割れたと思います。2018年の新人王は全く意識していなかったので、シーズン中にノリさん(則本昂大/楽天イーグルス/2013年新人王)にハッパをかけられて……。僕が新人王を獲った時はノリさんがすごく喜んでくれましたね。立教大学野球部の溝口智成監督(1991年経済学部経営学科卒業)からも「新人王おめでとう」という連絡をいただいて、嬉しかったです。

スイッチヒッターとして大事にしていることはありますか。

室内練習場でのバッティング練習(右打席)

室内練習場でのバッティング練習(右打席)

右の感覚と、左の感覚は全く異なっていて、両方調子が良いというのもあまりないので、鍛え方が難しいです。右打席が調子悪い時には左打席に専念するということも何度も考えました。しかし、2018年は年間を通してスタメンで使ってもらっていたのでひとまず右投手には左打席、左投手には右打席でやり通してみようと思いました。本当は「この打席左で立ちたいな」と思いながらも右打席に入ったりはしました。両打ちはアピールポイントなので、続けていきたいと思っています。

11月に行われた日米野球で初めて侍ジャパンに選出されました。

高校と大学時代は無縁だったので、プロに入ってからも自分が侍ジャパンでプレーする姿を想像していなかったです。2018年の半年で変わりました。球界を代表する選手たちと一緒に練習するのは緊張しましたね。シーズン中の練習と日米野球の試合前練習ではメニューそのものは同じだったのですが、やはり何か気迫の違いを感じました。試合前の練習の時間が一番緊張というか、ソワソワしましたね。

実際に対戦したアメリカチームの選手はいかがでしたか。

メジャーリーグの投手は凄いと思いました。日米野球では結果を出していないのですが、長期間戦ったら日本の投手の方が打てない気もしました。メジャーリーガーの球は速いのですが、スピードガンと体感スピードが一緒の印象。日本の投手は球のキレがすごくて、140㎞と表示されていても150㎞に感じる、そういう投手が多いと思います。海外の投手に触れてみて、日本の投手の技術の高さを実感しました。

大学野球とプロ野球の違いはなんでしょうか。

野球部グラウンドでのバッティング練習(左打席)

野球部グラウンドでのバッティング練習(左打席)

見た目では分からない凄さというのがあると思います。大学生でもプロ野球選手でも球速145㎞の投手はいますよね。お客さんとしてスピードガン表示を見ていたら一緒だと思うのですが、打席に立っての体感スピードが全く違います。ボールを投げる動作をとってみても、細かなところのレベルが高いんです。一つ一つは大きな差はないのですが、動作・プレーの緻密さと確実さが積み重なって大きな違いになるのでしょう。それと、派手さですね。しっかりとやることはやって、その中でもお客さんが見て楽しんでくださる派手さが出せるというのがプロ野球だなと思いますね。

久しぶりに立教大学のグラウンドで練習してみていかがですか。

設備が整っていると思いました。僕が入学した頃は人工芝じゃなかったし、室内練習場もなかった。今回、立教で練習ができて良かったです。

大学時代の野球で一番印象に残っていることは何でしょうか。

早稲田大学のピッチャーだった有原航平さん(2014年早大卒/北海道日本ハムファイターズ)ですね。僕は大学2年次から神宮でレギュラーになって、秋には打率3割くらいだったのですが、有原さんと対戦した時は3打数無安打3三振という結果。打ちたいと思っていたのにレベルの差を見せつけられました。そのことがあって、東京六大学野球で印象に残っているのは大学2年次の秋の有原さんの3打席ですね。自分が負けた……レベルの違いを一番感じた試合でした。

学生生活で得たものでいまに生きていることはありますか。

早起きですね。プロに入ってから朝寝坊をしたことがないんですよ。野球部の寮生活で身に付いた早起きと時間を守るとことは、プロ野球選手となったいまも本当に生きています。時間に対する考え方が、立教で過ごして一番成長した面かもしれません。それから、僕は法学部だったのですが、集中する力! メリハリがつきました。テスト前、野球部の中では法学部が一番勉強していましたね。覚えることがとにかく多くて、とにかく集中! おかげでオンとオフのメリハリをつけることが得意になりました(笑)

2018年の結果を受けて、練習から意識していることはありますか。

貫くということです。2018年は9月頃に、新人王のために打率を落とさないようにということを考えて、自分のスタイルを見失いかけていました。自分は「三振してもいいから思い切り振ろう」という考えでやってきて、その中で当てていきたいからノーステップ(ノーステップ打法)にしていたのですが……しっかり振るということをやってきたのに、当てにいこうとしてしまいました。当てにいこうとする気持ちが前は50だったのが、100になってしまって。自分のバッティングを見失ってどんどん結果が落ちてしまいました。スタイルは変えていいと思うけど、自分の考え方の軸は変えないようにしたいです。

2019年の目標は何でしょうか。

けがをせず全試合に出るということです。いろいろな数字を期待していただけるのですが……例えば盗塁とか打率3割とか。そういう前にまずは全試合出ないと。全試合出て22本ホームラン打ちましたとなったら、じゃあ来年は30本目指そうかなというふうになると思います。昨年は105試合(全試合数は143)出場でしたので、レギュラーとして全試合出場したら、次の目標を考えたいと思います。

最後に、立教大学の後輩にメッセージをお願いします。

人生はどこにターニングポイントがあるか分からないので、いまを全力で過ごしてほしいです。中途半端はダメです。勉強に限らず、アルバイトする人はアルバイトをしっかりした方がいいし、遊びたいと思うならしっかり遊んだ方がいい。僕は野球部の活動と法学部の学びに集中しました。とても楽しく充実した大学時代を過ごせましたし、大切な人とのつながりも得ることもできました。先輩や後輩、立教で出会った人とのつながりを大切にして、大学を思いっきり楽しんでください。
※記事の内容は取材時点のものです。(取材2019年1月13日)
取材・撮影:「立教スポーツ」編集部 文学部文学科文芸・思想専修 2年次 内村彩香

プロフィール

PROFILE

東北楽天ゴールデンイーグルス 田中和基さん

1994年福岡県生まれ。2017年、立教大学法学部政治学科卒業。
2016年のドラフト3位で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。右投げ/両打ち。
1年目の2017年は51試合に出場。2年目の2018年は105試合に出場し、成績は[112安打、18本塁打、45打点、打率.265]。パ・リーグ新人王を受賞。
本学出身の野手が新人王に輝くのは、1958年の長嶋茂雄さん(1958年経済学部経営学科卒業)以来、60年ぶり。

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