正解の無い時代だからこそ、個人の可能性を伸ばす人材育成を
リクルートホールディングス代表取締役社長兼CEO 峰岸 真澄さん
2015/12/14
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
本学卒業生であり社会を牽引するグローバル企業・リクルートホールディングスのリーダーとして活躍されている峰岸真澄さんに、お話を伺いました。
業界を「見える化」し、進化させる、リクルートのマッチングビジネス
リクルートには「私たちは、新しい価値の創造を通じ社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。」という経営理念があり、その実現のため、さまざまなサービスを提供しています。私がリクルートに入社したのも、こうした理念に共感したからです。私たちのサービスは現在、社名からは想起できない分野にまで裾野を広げていますが、一番分かりやすいものが、就職、転職といった個人のキャリア選択を支援するサービスの総称である「リクナビ」でしょう。ほかにも、多くの受験生にご利用いただいている「受験サプリ」や、住宅・不動産購入や売買をサポートする情報サイト「SUUMO(スーモ)」、ウエディング、ブライダル情報を広く提供する「ゼクシィ」など、リクルートのサービスは、一人の人のライフステージにおいて重要な意思決定を助け、創造する、人生の選択に欠かせない存在となっています。一方で、国内外の旅行情報を提供する「じゃらん」「エイビーロード」や、飲食店やヘアサロンなどの情報を網羅した「ホットペッパー」など、日常的な消費行動に寄り添ったサービスも数多くあります。
これらのサービスに共通しているのは、企業が提供するさまざまなサービスや商品群と個人のニーズを結びつけるマッチングビジネスであるということ。こうした企業と個人のマッチングを促進することで、各業界の進化に貢献できると考えています。例えば、不動産物件の説明にある「駅から徒歩1分」といったあいまいな基準に対し、「80メートルを徒歩1分」と提案したのはリクルートなのですが、こうした不透明な部分をクリアにしていくことで、不動産業界の進化に寄与できたのではないかと思います。こうした各業界の進化こそが、個人の不自由・不便といった「不」の解消につながっていくのです。
現在リクルートには3万人を超える従業員が在籍しています。私が社長に就任した2012年には売り上げが約8千億でしたが、4年目の今期見通しは1兆5500億円と、およそ2倍となっています。また2012年に300億円だった海外売り上げについては、2015年3月期で3300億円と、11倍に成長しました。そして2020年には人材サービス分野で世界ナンバーワンとなることを目指しています。そこでカギとなるのはやはり、リクルートならではの人材育成です。「圧倒的な当事者意識」「起業家精神」を引き出し、「個の可能性に期待する場」を提供するという企業文化が、こうした目標を達成に導く「強い個人」を育むのです。
現在リクルートには3万人を超える従業員が在籍しています。私が社長に就任した2012年には売り上げが約8千億でしたが、4年目の今期見通しは1兆5500億円と、およそ2倍となっています。また2012年に300億円だった海外売り上げについては、2015年3月期で3300億円と、11倍に成長しました。そして2020年には人材サービス分野で世界ナンバーワンとなることを目指しています。そこでカギとなるのはやはり、リクルートならではの人材育成です。「圧倒的な当事者意識」「起業家精神」を引き出し、「個の可能性に期待する場」を提供するという企業文化が、こうした目標を達成に導く「強い個人」を育むのです。
立教大学で取り組んだ「学園祭の復活」がその後の人生の支えに
私は、立教大学に入学したのち、今しかできないこと、さらには、何かをゼロから創造したいと考えていました。そうした掛け算からたどり着いたテーマが、1976年から休止されていた「学園祭の復活」です。そしてこの大学時代の経験こそが、今の私のビジネスはもちろん、人生の支えになっています。
当時「プロデュース研究会」に所属し、さまざまな団体と連携してイベントを実施する中、立教大学では数年間学園祭が行われていないという事実に疑問を抱いたことが発端でした。今思えばそれは実にピュアな気持ちで、大義があったわけではありません。ただ、その事実をそのままやり過ごすことができず、なぜ休止になったのかを調べ始めました。調べていくうちに、これまでの先輩たちも復活に向け、幾度となくチャレンジしていたことが分かりました。こうして、ピュアな疑問を突き詰めていくうちに、「学園祭を復活したい」という、学生生活を賭けるほどの強い動機が形成されていったのです。
当時「プロデュース研究会」に所属し、さまざまな団体と連携してイベントを実施する中、立教大学では数年間学園祭が行われていないという事実に疑問を抱いたことが発端でした。今思えばそれは実にピュアな気持ちで、大義があったわけではありません。ただ、その事実をそのままやり過ごすことができず、なぜ休止になったのかを調べ始めました。調べていくうちに、これまでの先輩たちも復活に向け、幾度となくチャレンジしていたことが分かりました。こうして、ピュアな疑問を突き詰めていくうちに、「学園祭を復活したい」という、学生生活を賭けるほどの強い動機が形成されていったのです。
これまで実現に至らなかったのは、今までのやり方に従っていたからではないかという仮説のもと、私たちはとにかくできることをやっていき、ある段階で問題が生じたら都度修正していくという実証主義的なアプローチを試みました。学園祭である立教祭の復活には、全学の総意、すなわちクラス委員会や文化団体連合、体育会の合意を得ることが定石でしたが、その時点ですでにクラス委員会、文化団体連合は組織としての機能を失っていました。そこで、一番共感を得やすい文化団体連合の各団体から合意を得た上で、クラス会の意に代わるものとして一般学生からの署名を集め、また、参加を希望するサークルを味方につけるといった事実を積み上げていくと同時に、学園祭を円滑に実施できるよう、消防署や商店街への説明などを同時に行っていきました。
最後まで交渉を続けましたが、結局、全ての団体からの合意を得ることはできませんでした。そこで、全学の総意としての学園祭の復活という提案ではなく、秋季休業中の教室等施設の貸し出しのお願いをし、認めてもらいました。参加団体内部においては、事務局の運営を私たち「セントポールズフェスティバル運営委員会」に任せていただきたいという提案をし、認められました。こうして学園祭を実質的に復活させるという思いが成就したのです。
さらにもう一つ重要だったことは、持続的に「セントポールズフェスティバル」を開催できる仕組みを作ることでした。そのため、学園祭の実施は「ユニバーシティ・アイデンティティ」に関わる問題だという意識を共有し、積極的に仲間を巻き込んでいきました。また、参加するサークルなどの団体には、例えば出店で使用するガスは自分たちで準備してもらうなど、主体性を持ってそれぞれの役割を果たしてもらい、次年度以降も一つ一つのノウハウが全員で共有されるような仕組みを作ったのです。これらはまさに、リクルートの企業文化である「圧倒的な当事者意識」であり、「個の可能性に期待する場」を設定するという考えにつながるエピソードです。
最後まで交渉を続けましたが、結局、全ての団体からの合意を得ることはできませんでした。そこで、全学の総意としての学園祭の復活という提案ではなく、秋季休業中の教室等施設の貸し出しのお願いをし、認めてもらいました。参加団体内部においては、事務局の運営を私たち「セントポールズフェスティバル運営委員会」に任せていただきたいという提案をし、認められました。こうして学園祭を実質的に復活させるという思いが成就したのです。
さらにもう一つ重要だったことは、持続的に「セントポールズフェスティバル」を開催できる仕組みを作ることでした。そのため、学園祭の実施は「ユニバーシティ・アイデンティティ」に関わる問題だという意識を共有し、積極的に仲間を巻き込んでいきました。また、参加するサークルなどの団体には、例えば出店で使用するガスは自分たちで準備してもらうなど、主体性を持ってそれぞれの役割を果たしてもらい、次年度以降も一つ一つのノウハウが全員で共有されるような仕組みを作ったのです。これらはまさに、リクルートの企業文化である「圧倒的な当事者意識」であり、「個の可能性に期待する場」を設定するという考えにつながるエピソードです。
やりたいというピュアな気持ちを大切に、好奇心を持って最後までやり通す
このように私は立教大学で貴重な経験をすることができました。だからこそ、後輩の皆さんにもぜひ「やりたいという気持ち」を大切にしてほしいと思っています。やりたいという自分の気持ちにピュアに従う。その気持ちこそが大きなエネルギーとなるのです。ただし、あれもこれもと中途半端ではなく、やりたいことをしっかりと絞り込み、一度決めたら最後までやり通す胆力が必要です。やりたいことが見つからないという人は、焦って見つけようとしなくてもいい。学生生活を送る中で、何かにぶつかったとき、見逃さず好奇心を持って「なぜだろう」という疑問を持ち続けて行動すれば、必ず自分のテーマと出会えるはず。私の場合はそれがたまたま学園祭だったわけですが、勉強を頑張ってもいいし、アルバイトや課外活動に燃えるのもよいでしょう。「自分がやりたいことをピュアに望み、必ずそこを第一歩にして真剣に進んでいけば、ことの善悪は関係無しに善になっていく」というのが、私の信念です。
今は私たちの時代とは違い、「正解が無い時代」といわれ、課題への答えは一つとは限りません。一人のアイデアや感性、行動が全て正解になり得るため、今後ますます個を生かすことが重要となります。このように正解の無い時代にリクルートの企業文化はマッチします。個にやりたいことを開放していく。そこからヒントをもらい、企業としてその個人を支援し、投資をするというスタイルに、企業の役割も変わっていかねばなりません。
そのため、私たち親世代は、こうした時代の在り方を理解し、子どもたちに正解を押し付けず、またレールに乗せることなく、やりたいことを支援してあげることが大切ではないでしょうか。そして、つまずいたときにはメンターとなり、適切な提案をする。目標も親が与えるのではなく、自分で設定をさせる。これは、子育てをする上でも、学生時代のチャレンジの上でも、企業経営の上でも、私の軸となっている考えです。
そのため、私たち親世代は、こうした時代の在り方を理解し、子どもたちに正解を押し付けず、またレールに乗せることなく、やりたいことを支援してあげることが大切ではないでしょうか。そして、つまずいたときにはメンターとなり、適切な提案をする。目標も親が与えるのではなく、自分で設定をさせる。これは、子育てをする上でも、学生時代のチャレンジの上でも、企業経営の上でも、私の軸となっている考えです。
社会人になるということはゼロからスタートすること
卒業する際、大学生活を通して自らの成長を実感し、自信を持って社会に巣立っていく人も多いと思いますが、社会人になるということはゼロからスタートすることです。
自分のやりたいことは何か。できることは何か。そのために自分がしなければならないことは何か。リクルートでは、それらを「WILL(やりたいこと)」「CAN(できること)」「MUST(やるべきこと)」と呼んでいます。学生の皆さんは社会人になった途端、MUSTだらけの環境に戸惑うでしょう。CANが無いのだから、仕方がありません。MUSTは次第に大きくなり、自分自身にのしかかってきます。しかし、MUSTをこなしていくうちにCANが増え、無意識のうちにMUSTが小さくなっていくことを実感できるでしょう。その時、WILLがあればもちろんいいのですが、たとえ無くても心配いりません。CANが増えてくると、突然WILLが舞い降りてくる可能性があるのです。リクルートでも、WILLとCANが交わって一つになった状態が一番モチベ—ションが上がった状態であると考えています。それはMUSTが限りなくゼロになった状態でもあります。
私が課長になった時から新入社員にアドバイスしていることがあります。それは、「入社後3年間でその後の人生が決まる」ということ。スタートダッシュを以上のような心構えで臨むか、ただ漫然と過ごしMUSTが膨らんでいく毎日に愚痴を言って過ごすのか。学生時代に華やかな経験が無くても、社会人になってから頑張ればいい。逆に学生時代に大きな成果を挙げた人こそ、気持ちを引き締めて最初の3年間を過ごしてほしいと思っています。
立教大学が掲げている「自由の学府」。これは私の信念でもあります。人間の可能性は無限です。「個人の個性を生かす」という風土をこれからも続けていただきたいと思っています。さらにこれからは、新たな立教大学のビジョンである「自分、世界、そして未来を拓く」にふさわしく、小さな視点での「自由の学府」ではなく、グローバルな視点を持ち、世界を変える、課題を解決するという観点で、個人の可能性が拓かれる大学であるよう、卒業生としてこれからの立教大学に期待しています。
(2015年10月30日 リクルートホールディングス本社ビルにて)
自分のやりたいことは何か。できることは何か。そのために自分がしなければならないことは何か。リクルートでは、それらを「WILL(やりたいこと)」「CAN(できること)」「MUST(やるべきこと)」と呼んでいます。学生の皆さんは社会人になった途端、MUSTだらけの環境に戸惑うでしょう。CANが無いのだから、仕方がありません。MUSTは次第に大きくなり、自分自身にのしかかってきます。しかし、MUSTをこなしていくうちにCANが増え、無意識のうちにMUSTが小さくなっていくことを実感できるでしょう。その時、WILLがあればもちろんいいのですが、たとえ無くても心配いりません。CANが増えてくると、突然WILLが舞い降りてくる可能性があるのです。リクルートでも、WILLとCANが交わって一つになった状態が一番モチベ—ションが上がった状態であると考えています。それはMUSTが限りなくゼロになった状態でもあります。
私が課長になった時から新入社員にアドバイスしていることがあります。それは、「入社後3年間でその後の人生が決まる」ということ。スタートダッシュを以上のような心構えで臨むか、ただ漫然と過ごしMUSTが膨らんでいく毎日に愚痴を言って過ごすのか。学生時代に華やかな経験が無くても、社会人になってから頑張ればいい。逆に学生時代に大きな成果を挙げた人こそ、気持ちを引き締めて最初の3年間を過ごしてほしいと思っています。
立教大学が掲げている「自由の学府」。これは私の信念でもあります。人間の可能性は無限です。「個人の個性を生かす」という風土をこれからも続けていただきたいと思っています。さらにこれからは、新たな立教大学のビジョンである「自分、世界、そして未来を拓く」にふさわしく、小さな視点での「自由の学府」ではなく、グローバルな視点を持ち、世界を変える、課題を解決するという観点で、個人の可能性が拓かれる大学であるよう、卒業生としてこれからの立教大学に期待しています。
(2015年10月30日 リクルートホールディングス本社ビルにて)
※本記事は季刊「立教」235号 (2015年12月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
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プロフィール
PROFILE
峰岸 真澄さん
1987年3月 立教大学経済学部経済学科卒業
1987年4月 株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社
1992年10月 新規事業準備室(ゼクシィ)配属
2002年4月 ゼクシィ事業部 事業部長
2003年4月 執行役員(IMCディビジョンカンパニー)
2004年4月 常務執行役員(IMCディビジョンカンパニー、住宅ディビジョンカンパニー)
2009年6月 取締役常務執行役員(経営企画、事業開発、住宅領域)
2011年4月 取締役専務執行役員(経営企画、全社WEB戦略室、事業統括本部)
2012年4月 代表取締役社長兼CEO就任
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